私が働いている図書館に子どもたちがやってきた。
あの子たちは近所の学校に通う小学生たちだ。
子どもたち一人ひとりにL字型の棒を二本手渡す。
それを平行に持ったまま図書館の中を歩いてもらう。
すると、その子が興味のある本の前で棒がひとりでに開くのだ。
いわゆる”ダウジング”と呼ばれるものである。普通、ダウジングは地中に埋まっているものを発見する為に使われるが、この図書館では興味のある本を見つけてもらう為に使われるのでる。
なかなか棒が開かない子には色々な棚を歩いてもらう。すると意外な棚で棒が開いたりする。
絵本の前で開いた女の子が男の子に冷やかされている。
私は二人の間にしゃがんで言った。
「絵本が好きなのは素敵なことなんだよ。将来お話を作る人になるかもしれないね」
そんなことを言いながら、自分が子どもだった頃を思い出す。
私もこの図書館でダウジングをしたのだけれど、私の棒は全然開かなかった。
司書のお姉さんが色々な棚に連れて行ってくれたのだけれど、どの棚でも私の棒は開かなかったのである。
私はものすごくショックを受けながら帰ろうとした。
図書館を出た時、司書のお姉さんが「待って!」と駆け寄ってきた。
そして私にまたダウジング用の棒を渡したのである。
私がそれを持ってみると、棒はすーーっと開いた。
「あなたは図書館に興味があるのね」
お姉さんがにっこりと笑って、私を貸し出しカウンターの横に連れて行った。そこには図書館の資料がたくさん並んでいて、私のダウジング棒はそこでまたぐぐぐーっと開いた。
あのお姉さんのおかげで私は今、図書館司書として働いている。
いつか自分が選んだ本で小さな本屋さんを作りたいな、なんて思っている。
おや、あの子、棒が開かなくてしょんぼりしている。
大丈夫、かならず見つかるから。
そんなことを考えながら、私はその子に話しかけた。
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