何気なく入った古道具屋さんで、気になる座布団を見つけた。
なぜだか妙に魅力を感じる。
「それは気の置けない座布団です」
店主らしい女性が話しかけてくる。
「その座布団に座ると、本人の意思とは関係なしに、リラックスしてしまうんですよ。棋士の方が相手に使おうとして見つかった、なんてこともあったのだとか」
「へぇ、面白い! 買います!」
店主さんがじっと私を見て言う。
「あなた、もしかして……占い師さん?」
「そうです! よく分かりましたね」
「職業柄、色々な人を見ているので、その人の職業がなんとなく分かるようになったんです」
店主さんはそう言ってにこりと笑った。
座布団を持ち帰った私は、さっそく使ってみることにした。
相談者の方の席に座布団を設置する。
すると、相手はリラックスした様子で色々なことを話してくれた。
これはいい買い物をした。
占いに来ているのに、緊張してなかなか相談事を話してくれない人も多いのだ。
ある日、高校生くらいの女の子がやってきた。
その子は席に座ってもあまり話さなかった。
あの座布団の上に座っているはずなのに、おかしいなぁ。
女の子に声をかける。
「しゃべりたくなったらで、いいからね」
「はい」
私は女の子になんでもない世間話をしたりして、なんとか雰囲気を和ませようと思った。
しかし、反応がかんばしくない。
う〜ん……。
その時私は、大変なことに気がついた。
座布団を定期的に洗っていたのだが、例の気の置けない座布団を、あべこべに置いてしまっていたのだ。
つまり、今リラックスしているのは私なのである。
「あははは!」
私は思わず笑ってしまった。
女の子が怪訝な表情でこちらを見る。
「あぁ、ごめんごめん。えーと……思い出し笑い?」
私が苦しい言い訳をすると、女の子はくすりと笑ってくれた。
それで女の子の緊張も解けたようで、少しずつ話をしてくれた。
こんな使い方もいいかもな、と思いながら、私は彼女の話に耳を傾けた。
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