仏壇に置いておいたポチの鈴がリンリンと鳴った。
最初は隙間風でも吹いたのかと思ったが、どうも違う。
「ポチ?」
思わず私はそう声をかけた。
リンリンと鳴っているその鈴はポチが大好きだった鈴だ。
元々野良猫だったポチ。
猫なのに夫にポチと名付けられた我が家の愛猫。
夫にお供するようにお空へと昇っていったポチが遊びに来てくれたのかな。
私はポチの鈴を持って、畳の上にコロコロと転がした。
するとまたポチの鈴がリンリンと鳴った。
私はポチとこの鈴で遊んでいた頃のことを思い出して嬉しくなった。
それからしばらく、ポチの鈴はリンリンと私に遊んでくれとせがみ、私もポチと鈴で遊んだ。
しかし、ある日を境にポチの鈴が鳴らなくなった。
ポチは気まぐれな子だったので飽きちゃったのかな、なんて私がちょっと寂しい気持ちになっていた頃。
仏間の畳に置いておいたポチの鈴がまたリンリンと鳴った。
台所で炊事をしていた私は、ポチが来たと思い、いそいそと仏間に向かった。
しかしそれはポチではなかった。
どこから上がり込んだのか、茶トラのポチとは全然違う黒い毛の猫がポチの鈴をつついて遊んでいた。
「あら、あなたどこの子?」
首輪はつけていない。
毛並みなどから察するに、どうやら野良猫だ。
その子はそれから何度もうちに遊びに来て、たまりかねた私が「うちの子になるかい?」と声をかけると、するりと家に上がり込んだ。
寂しがり屋な私の為に、ポチが鈴でこの子を呼んできてくれたのかもしれないなぁなんて思いながら、私は捨てられずにいたポチの餌入れを取り出した。
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