天秤貯金箱なるものを買った。
天秤とセットの貯金箱である。
買いたい物を念じながら貯金箱を天秤に乗せると、普通は貯金箱自体の重みで貯金箱側が下がるはずなのに、そうはならず貯金箱を置いていない側が下がるのだ。
そして貯金箱にお金を入れて、目的の金額が貯まると徐々に貯金箱側が下がっていき、釣り合ったら買いたいものを買ってもいい、というものだ。
要は買いたいものを買う資格があるかどうかを測るもの、なのである。
僕は気になっている女の子の心が欲しい、と念じながら貯金箱にお金を入れた。
だが、いくら貯金箱にお金を入れても天秤は釣り合わなかった。
当たり前だよな……と思っていると、友だちが遊びに来た。
「なにこれ?」
友だちが天秤貯金箱を指差して聞く。
僕が説明すると、彼は「ふーん」と言いながら紙に何かを書き始めた。
そして「これを入れてみなよ」と紙を僕に渡す。
なんのことやら分からないまま紙を貯金箱に入れると、貯金箱側が下がり、天秤が釣り合った。
「な、何を入れさせたんだ?」
僕が聞くと、彼は笑いながら言った。
「おまえの気持ちを書いただけさ。気持ちを思い切って打ち明けてみなよ」
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