枕通信

ショートショート作品
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 最近おかしな夢を見る。

 目の前に火星人のようなおかしな生物がたくさんいるのだ。

 どうやら僕もその火星人の一人のようである。

 火星人として時を過ごす、そんな夢だ。

 どうやら同じ人……人と言っていいのかわからないが、とにかく僕は同じ個体として夢を見ているようで、呼ばれる名前なども同じなのだ。

 夢にしては珍しい連続性があるというわけである。

 ある日、夢から目覚めると、机の上のノートに「こんにちは」と書いてあった。

 最初はなんのことか分からなかったし、誰が書いているのかも分からなかったが、どうやらそれは僕が書いているらしいことが分かった。

 僕は夢を見ていたわけではなかったのだ。

 僕は夜な夜な、あの火星人らしき人物の一人と、枕を介して入れ替わっていたのである。

 それから僕たちは、お互いの筆記手段、お互いの言語で文通をするようになった。

 夢から覚めるまでに、つまり入れ替わりから戻るまでに、お互いがそれと分かるようにメッセージを残しておいた。

 一ヶ月くらい、そんな奇妙な体験をしただろうか。

 ある日、僕が慌てて入れ替わりから戻ると「色々教えてくれてありがとう」と書き置きがしてあった。

 まさか。それじゃあ、本当に。

 先ほどの夢で、僕は火星人のみんなと一緒に宇宙船に乗り込んだのだ。

 その宇宙船は、長い旅路の末、ついに地球に到着したところで目が覚めたのだが……。

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