宝玉の選別

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 ある異国の話。

 その国では代々王にふさわしいものをある特殊な方法で選んでいた。

 世襲でもなく、投票による選別でもない。

 王を選ぶ時に使う道具、それはシーソーであった。

 シーソーの片側に、代々国に伝わる宝玉を置く。

 するとシーソーは宝玉側に傾く。

 そして反対側に王の候補となる人間がまたがる。

 普通に考えれば人間の方にシーソーが傾くが、跨った人間が王にふさわしい人間の時にしかシーソーは傾かない。

 王の退陣に伴い、その国では王の選抜が行われる。

 今、まさにその選抜が行われていたが、中々シーソーが傾かず、長らく王不在の状態が続き、国力が弱まりつつあった。

 そこにやってきたのは、ムルという男とその飼い猫であった。

 ムルはこの国の生まれで、世界中を旅し、類い稀な知識と行動力を備えた男であった。

 ムルは選別を一度断ったが、国の民による推薦を受け、皆が固唾を飲んで見守る中、シーソーにまたがった。

 シーソーは……動かなかった。

 ため息がその場を包む。

 と、その時、ムルの飼い猫がぴょんとシーソーに飛び乗った。

 シーソーはゆっくりと傾き、飼い猫側に倒れた。

 猫は初の人間以外の国王になった。

 もちろん、主だった政治はムルが行ったが、トップが猫である事実は変わらなかった。

 それが国にとって良い方向に働いたらしく、その国は長い間、戦争もなく、恐慌に見舞われることもなく、平穏な時代が続いたということだ。

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