ある一人の老人が、よく釣りに出かけていた。
沖釣りである。
老人は暇さえあれば釣りに出かけていったのだった。
そんな老人が亡くなり、遺産が息子に引き継がれることになった。
老人の弁護士を務める男が息子に言った。
「ついてきてください」
弁護士は老人の息子を連れて海の沖合までやってきた。
ここは老人がよく釣りをしていた場所である。
「これが鍵です」
弁護士は息子に貝殻を差し出した。
「鍵ぃ?」
息子は訝しみながら貝殻の鍵を受け取った。
「お父様は”海底貯金”をしていたそうです。折りに触れここを訪ね、ここからお金を落として貯めていたんだそうです」
「はぁ? 何言ってんだ。そんなの流されてっちまうに決まってるだろ。ったく、もったいねぇなぁ」
「とにかく確認してみましょう」
弁護士はそう言うと、息子に潜水用の装備を渡し、自分もそれを身に着け始めた。
「ったく、正気かよ……」
息子は文句を言いながら装備を身に着けた。
弁護士と息子は海底へ潜った。
すると息子の持っていた貝殻の鍵が光り輝き始めた。
それと同時に二人の目の前にある岩がパカリと割れて、中から水泡と共に金塊が出てきた。
「な、なんだこりゃ!?」
「……どうやら海底貯金に利息がついていたようですね」
「利息?」
「はい。お父様は小銭を貯めていたようですが、それに利息がついたのです。海底貯金の利息は地上のものとは比べ物にならないようですね」
老人の息子はその金塊を持ち帰り、金塊を課金した金でテーマパークを作ることにした。
しかしその事業はあっけなく失敗に終わり、テーマパークは廃墟と化してしまった。
こつこつと老人の貯めた遺産には潤沢な利息がついたが、その遺産はまさに水泡に帰してしまったのである。
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