これダメオウム

ショートショート作品
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 我が家は小さな商店を営んでいる。

 商店の店先でオウムのムーちゃんを飼っているのだが、ある日、カゴから飛び出したムーちゃんが売り物の缶詰の上にとまって「ダメーダメー! これもうダメ―!」と鳴いた。

 見てみると、古い缶詰で賞味期限が切れかかっていた。

 それから、ムーちゃんはダメになったものを見分けてくれるようになった。

 ムーちゃんに頼めば廃棄するべき商品が分かっていい。そして何より、ムーちゃんのおかげでお店に人が集まってくるようになったのが嬉しい。

 近所の炊事担当たちが、冷蔵庫に入れていた料理などを持ってくるのだ。

「ムーちゃんの言うことは絶対だからね」

 なんて言いながら、数日前に作った煮物が大丈夫かどうかチェックしていったりするのだ。

 そしてついでに商品を買っていってくれる。

 コンビニに押されていたが、ムーちゃんのおかげで商店の売り上げが伸びた。

 そんなある日、近所に引っ越してきた若い夫婦が店にやってきた。

 奥さんが、ムーちゃんのことを見て「すごいすごい!」とはしゃぐ。

 それを見て旦那さんが言った。

「こんなの嘘に決まってるじゃん」

 と、ムーちゃんが飛び上がり、旦那さんの肩にとまった。

「うわ、なんだよこいつ!」

 慌てる旦那さんをよそに、ムーちゃんは「ダメーダメーこれもうダメ―!」と大声で鳴いたのだった。

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