これは知られざる社会実験の記録である。
その実験とは「エゴバック」にまつわる実験であった。
任意の対象者向けに、”エゴバック”というものを配布した。
そのバッグは常に対象者を観察し、対象者がエゴに基づく行為をとると、どんどん重くなる。
エゴバッグは一定の重さ以上になると捨てることができる。
回収場所まで自分で持っていって、捨てるのだ。
満杯になったエゴバックはかなりの重さになり、放っておくと床が抜けるので、対象者は捨てに行かざるを得ないのであった。
数年後、エゴバック実験に関する統計が上がってきた。
エゴバックを持っている人の中で、満杯になったエゴバックを捨てに行った回数が多い対象者の方が寿命が長いという結果が出た。
それを見て学者が頭を抱えた。
「なんということだ。やはり自分勝手な人間の方が長生きするのか」
それを聞いて、助手は言った。
「いえ。長生きだった対象者は、重いエゴバックを何度も捨てに行ったので、足腰が強くなったようで……」
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