霊視能力の世襲的問題

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 私は昔から霊が見える体質だった。

 その体質について信じてくれたのは、じいちゃんだけだった。

 ある時、じいちゃんが薬をくれた。

 それは丸いころころとした丸薬だった。

「これを飲め」

 じいちゃんにそう言われて私が薬を飲むと、いつも見える幽霊の姿が変わった。

 顔にモザイクがかかったのである。

 私がそう言うと、じいちゃんは「無念……」とつぶやいた。

 一体どういうことなのか、と私が訳を聞くと、じいちゃんはこんな話を始めた。

 我が家の家系では、必ず一代飛ばしで霊視の能力が世襲されるらしい。

 じいちゃんのじいちゃん、つまりひいひいじいちゃんは、モノクロで幽霊が見えたそうだ。

 そしてじいちゃんは薄く幽霊が見える。

 もっと前の先祖は幽霊に話しかけられることもあったらしい。

 つまり、代を追うごとにだんだん霊視の能力が弱まっているのだ。

 その理由があの薬らしい。

 霊視の世襲に気がついた先祖が作った薬だそうで、その薬を飲めば霊視の能力が弱くなる。

 しかし薬は人生で一度しか飲めないそうだ。

 じいちゃんの代で薄く見えるようになったのだから、私は薬を飲めば完全に見えなくなる、とじいちゃんは思っていたそうだ。

「仕方ないな」

 じいちゃんはそう言って私の頭をなでてくれた。

 月日は過ぎ、そんな私にも孫が生まれた。

 孫の様子を見るに、やはり孫も幽霊が見えているようだ。

 私は、じいちゃんから受け継いだ薬を孫に飲ませた。

 すると孫は「あはは!」と笑ってから言った。

「霊が見えなくなったよ」

「おぉ、そうか!」

「でもね、声だけは聞こえる」

「え?」

「それがね、テレビなんかでモザイクがかかっている人の声みたいに、甲高い声で面白いんだ」

 それを聞いて私は思わず、無念……とつぶやいた。

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