友達と一緒にキャンプに行った時、僕は面白いビジネスアイデアを思いついた。
夕食のバーベキューを食べ終わって、みんなで夜空を見上げている時に流れ星が流れた。
願い事を言おうとしたが、速すぎて間に合わない。
「あーあ、いつ流れるか分かればいいのにな」
そんな風に思った瞬間、ピンと来たのだ。
それから僕は、予約してもらった場所や時間に流れ星を降らせるサービスを始めた。
ドローンから星の光と同じように見える光を照射して流れ星に見せるのである。
実際に始めてみると、ドローンの操縦はそこまで難しくなかった。
それよりも、予約した人が来る前に待機して、時間になるまで待つ必要があるので体力仕事だった。
でも僕は全然苦にならなかった。
僕の考えたサービスを楽しんでくれる人がたくさんいたからだ。
「あ、ほら!」
そんな風に僕の降らせた流れ星を指差す人を見るとなんとも嬉しい気持ちになる。
女性を口説く時に流れ星を降らせて欲しいなんて男性からの依頼も多かった。
あとはお子さん向けに流れ星を見せてあげたいという親御さんからの依頼も多い。
ある日、そんな親御さんからの依頼で流れ星を降らせると、流れ星を見た子が言った。
「もっとゆっくりだったらよかったのに」
その言葉を聞いた僕は、ついサービスで流れ星のスピードをゆっくりにしてもう一度降らせた。
するとそれがまた評判になり「ゆっくりと流れ星を降らせて欲しい」なんていう依頼も入るようになった。
中には流星群みたいにたくさん降らせて欲しいなんて依頼も入るように。
サービスは評判になり、多忙を極めたが、スタッフを雇う気はなかった。
僕の作り出す流れ星のからくりは秘密にしておきたかったのだ。
夢は夢のままにしておいて欲しい。
ある日、仕事を終えた僕がぼんやりと夜空を見上げていると、一筋の流れ星が流れた。
思わず僕はその流れ星に「僕がたくさんいればいいのに」なんてお願いをした。
そんな僕の願いは叶えられることになった。
僕の他にもたくさんの業者が流れ星を降らせるサービスを始めたのである。
業者の数は、それこそ星の数ほど増えた。
そうなると粗悪な流れ星を降らせる業者も増え、業界は一気に廃れてしまった。
こうして僕の思いついた流れ星を降らせるビジネスは、流れ星と同じように一時の輝きを経て、はかなく消えたのだった。
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