あるコテージの支配人が、ある時気づいた。
暖炉に薪をくべると、パチパチと薪が燃える音がするが、その音がメロディになっている。
珍しい童謡を暖炉が奏でている。
これは面白いぞ、と、支配人はその暖炉を「メロディ暖炉」と紹介し、ホテルには暖炉目当てに連日客が訪れた。
噂は広まり、著名な実業家がやってくることになった。
その実業家は「コテージに融資してもいい」と願い出ていた。
融資を受けることができれば、今よりも設備をグレードアップして、さらに集客が見込める。
支配人は勢い込んで、いつもよりいい薪を取り寄せて実業家を待った。
はたして実業家がやってきて、支配人は「こちらが件の暖炉でございます」と言いながら暖炉に薪をくべた。
しかし、どうしたことか、いつものメロディが鳴らない。
実業家は、怒って帰ってしまった。
当然融資の話は白紙に。
なぜこんなことに、と落ち込んだ支配人は、それから一週間ほど経った頃にようやく気がついた。
暖炉がまたメロディを奏で始めたのである。
実は、この暖炉は何の変哲もない暖炉であり、使っている薪の方がメロディを鳴らすメロディ薪だったのだ。
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