招きの猫

ショートショート作品
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 最近、猫に招かれる事案が発生しているらしい。

 道を歩いていると目線の先に猫が座っている。

 猫はこちらに気がつくと招くように先を歩き出す。

 猫に招かれてついて行くと、どんどん知らない場所に行ってしまい、帰れなくなるというのだ。

 そんな噂を聞いて、私はむしろ招かれたいなぁなんて思っていた。

 猫は好きなのだ。どんなところへ招いてくれるのだろう。

 そんな噂のことを考えながら道を歩いていたら、目の前に猫が座っていた。

 猫はじっとこちらを見ていたかと思うと、私を招くように歩き始めた。

 私は猫の後をついていった。

 猫はふいっと路地裏への角を曲がり、とことこと歩いていく。

 猫が歩く道はどんどん狭くなっていった。

 私はその後ろを夢中で追いかけた。

 だが突然、はっと気がついた。

 猫の体がなんだか大きくなっている。

 いや、これは……私が小さくなってる!?

 やばい、と思った私は、急いで来た道を戻った。

 夢中で走って、ようやく人がいる場所まで戻ってきた。

 ほっとした私が息を整えていると、やけに身長の高い女の人が私の方にかがみ込むようにして言った。

「あら、可愛い猫ちゃん」

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