「反省の色」が見えるメガネが発明された。
そのメガネをかければ、反省しているかどうかひと目で分かるのである。
きちんと反省しているものは薄いブルーの雰囲気をまとっている。
メガネは様々な場面で有効活用されたが、特に活躍したのが司法関係である。
メガネの有効性が認められ、反省の色があるかどうかで刑罰の重さが変わることになったのだ。
ここに一人の裁判官がいる。
彼はある裁判所で裁判長をしているのだが、彼は満足していた。
最近、きちんと反省してくれる被告人が多いのだ。
裁判官は、それもこのメガネのおかげだろうか、と考えた。
何しろ見せかけの反省は通用しないのだから、本当に反省するしかない。
彼は今、ある窃盗団の事件を担当していた。
まだ全員は捕まえていないが、続々と構成員が裁判にかけられている。
その誰もがきちんと反省をしているようだ。
今日も裁判長の席についた彼はメガネを装着した。
やがてやってきた被告人の姿を見る。
うむ、きちんと反省しているな。
彼は大いに満足したが、彼は気づいていないのだった。
彼が今つけているメガネが、いつの間にかすり替えられていることを。
そのメガネは、窃盗団の残党によって、どんな人間にも反省の色が浮かんでしまうメガネに変えられていたのである。
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