殺害予告の顛末

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 会社を経営している私のところに、殺害予告が届いた。

 新聞記事を切り抜いて作られた、レトロなものである。

 ただのいたずら……だとは思うが、一部の人間にとって不利益になるような事業もしているので、一応警戒しておくことにする。

 副社長を呼び出して、予告状を見せた。

 副社長は社員を集めて言った。

「ということなので、怪しい人間を見たりしたら報告するように!」

 それから私は、社長室で「ようやくこれが役に立つな」と以前買った精巧なアンドロイドを起動させた。

 やはり持つべきものは人脈である。

 知り合いから最新鋭のアンドロイドを買っておいたのだ。

 世間にはまだまだ人間には程遠いアンドロイドが出回っているが、これは違う。

 ほとんど私自身と見分けがつかないくらいだ。

 このアンドロイドに今日一日私の代わりをやらせる。

 アンドロイドにはカメラもついているので、わざと危ない行動を取って犯人をあぶり出すのだ。

 私はアンドロイドを起動させてから、こっそりと自宅に帰った。

 夜になってアンドロイドも自宅に帰ってきたので、私はさっそくカメラの映像を確認することにした。

 アンドロイドである私が映し出す映像を眺める。

 アンドロイド目線の映像を見ていて、私は次第に恐ろしくなってきた。

 アンドロイドの私は指示通り、わざと窓際に立ったり、不用意に社外のコンビニに出かけていったりといった行動を繰り返した。

 しかしそんな私のことを、誰も止めようとしないのである。

 それどころか、外部からやってきた客をなんの躊躇もなく社長室に通したりしている。

 背中側についているカメラを確認してみると、通り過ぎた私をにらみつける者が、一人や二人ではなかった。

 副社長に電話をかける。

「なぁ、何か今日一日変わったことはなかったか」

「いいえ、なにも」

「本当か」

「はい。いたって平和な一日でした」

 電話を切ってから、「社長に殺害予告があったのに、いつもどおりでは困るのだ……」とため息を付いた。

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