小狐

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川編みの糸

 夏休みの登校日。  帰りがけに先輩の教室に寄ってみると、手芸上手な先輩が一人でマフラーを編んでいた。  先輩の机に置かれたスマホからは川のせせらぎの音が聞こえている。  私は教室の入口からその光景をじっと見つめた...
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霊視能力の世襲的問題

 私は昔から霊が見える体質だった。  その体質について信じてくれたのは、じいちゃんだけだった。  ある時、じいちゃんが薬をくれた。  それは丸いころころとした丸薬だった。 「これを飲め」  じいちゃ...
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竜巻貝

 頻繁に竜巻が起こる国があった。  その国では、竜巻が起こった後に不思議な現象が見られた。  貝が落ちているのである。  やがてその国の人々は、竜巻はこの貝が起こしているのだ、と結論づけるようになった。  ...
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開花貯金

 お母さんからメールが来た。 「開花貯金を始めたの」  そんなメッセージと共に花の写真が添付されている。  久しぶりだったので、私は電話をすることにした。 「メール見たよ。綺麗な花だね」 「そうでし...
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昨日修正

 昨日を修正してくれるところがあるらしい。  ただし、記憶だけ。  それも"昨日の記憶"だけである。  なんでも、まだ脳に定着していない、生の記憶しか修正できないそうだ。  私はその怪しげな場所に行ってみて...
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おはようトースター

 朝、私はまだ寝ぼけ眼でトースターにパンをセットした。  コーヒーを入れてテーブルでぼんやりしていると、やがてポンッと音を立ててトーストが出来上がった。  どれどれ、今日はどんなかな。  出来上がったトーストを見て...
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毒よせカメラ

 私は古道具屋で店番をしていた。  すると、男性が一人やってきて「これってどういうものですか」と私に尋ねた。  男性の元に行くと、そこには「毒よせのカメラ」という札がかけられていた。  えぇと、どういうものだっけ。...
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タイマー接着剤

 コヤギ博士から呼び出しを受けて、私はコヤギ博士の研究所に向かった。  私が研究所に着くなり、博士は言った。 「すごいものを発明したぞ!」 「おぉ、今度はどんなものですか」 「タイマー接着剤というものだ」 ...
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切り火のきーくん

「切り火」というものがある。  家を出ていく人に火打ち石でカチカチと火花を当てる、あれだ。  厄除けの効果があると言われているその切り火を、僕たちは夫婦でお互いに打ち合っていた。  僕はいつもどおり妻の背中に切り火...
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読書家なポルターガイスト

 昨日の夜中、目を覚ますと本が宙に浮いていた。  本はそのまま空中を漂って、それからガクガク震えだした。  私はびっくりして悲鳴もあげられなかった。  しばらくすると、本はすーっと本棚に戻っていった。  恐...
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