タイマー接着剤

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 コヤギ博士から呼び出しを受けて、私はコヤギ博士の研究所に向かった。

 私が研究所に着くなり、博士は言った。

「すごいものを発明したぞ!」

「おぉ、今度はどんなものですか」

「タイマー接着剤というものだ」

 博士はそう言って、接着剤のチューブを見せてくれた。

 それは変わった形をした接着剤で、キャップのところに時刻合わせの目盛りがついていた。

「そこで時刻を設定してから接着剤を塗ると、設定した時刻に接着剤が剥がれるんだよ!」

「おぉ、すごい! でも博士、ということは絶対剥がれない接着剤というのもできるのでは?」

「それじゃつまらんだろ……」

「そ、そうですか」

「ただこのタイマー接着剤、有効な使い方が思いつかなくてね。君もなにか考えてみてくれないか」

「はぁ、分かりました」

 私は家に帰って、あの不思議なタイマー接着剤の活用法を考えてみた。

 例えば、ドッキリなどには使えそうである。

 自分以外、誰もいない部屋で接着したものが取れて音を立てれば、驚く人も多いだろう。

 私に思い浮かぶのはせいぜいそれくらいだった。

 あまりいい活用法が思い浮かばないまま博士の研究所に行くと、博士が興奮した様子で言った。

「いい活用法を思いついたぞ!」

「え、本当ですか!? さすが天才ですね」

 博士が「こっちだ、来たまえ!」と私を寝室に案内する。

「ひっ」

 寝室に入った私は思わず悲鳴をあげてしまった。

 ベッドの上に恐ろしいイラストが印刷されたポスターが貼ってあったのである。

「私は寝坊しがちでね。目覚まし時計が鳴った時に、同時にこのポスターが剥がれて私の顔に覆いかぶさるように計算したんだ。そうしたら驚いて、絶対起きられるだろう」

 博士は満足そうにうなずいている。

 コヤギ博士、あなたは天才なのか、それとも……。

 やっぱり絶対剥がれない接着剤の方が便利だよなぁと思いつつ、私は何も言わないでおいたのだった。

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