中学三年生になって、新しいクラスになった。
私は一年生の頃からいつも誰よりも早く登校していた。朝の誰もいない教室で本を読むのが好きだったのだ。
三年生になって初めての登校日、その日も私は一番早く教室に向かった。
すると、黒板に絵が描いてあった。
今流行っている漫画の絵だ。
上手だなぁ、としばし絵を眺める。
できればこのままにしておきたいけど、先生に怒られるかもしれないな、と思い私は黒板の絵を消した。
黒板の絵は、次の日も次の日も描かれていた。
気のせいか日に日にうまくなっている気がする。
この絵、一体誰が描いているんだろう。
ある日、私は風邪で寝込んでしまい学校を休んだ。
二日学校を休んで次の日に学校に行くと、その日は黒板の絵がなかった。
あれ、珍しいな。
その次の日も同じように黒板の絵がなかった。
私は登校してきたクラス委員の友だちに聞いてみた。
「もしかして黒板のことってなんかあった?」
「あぁ、やっぱり佐々木さんが消してくれてたんだ」
「え?」
「誰かが落書きしてるって、問題になってね。学級会を開いたけど犯人は分からなかったんだ。学級会をしてから落書きはなくなったけど」
「そうだったんだ」
結局あの絵を描いていたのは誰だったのだろう。
月日は流れ、卒業の日。
とうとうこの学校ともお別れかと思いながら、私は誰もいない教室で窓からの景色を眺めた。
と、背後からカチャッとチョークが置かれるような音が聞こえた。
振り返るが、誰もいない。
そこに誰もいなかったはずなのに、よく見ると黒板に小さく「卒業おめでとう」と書かれていた。
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