大学の友だちが僕のアパートにやってきた。
彼は話がうまく、一緒にいると楽しい数少ない友人である。
彼が色々食べ物を買ってきてくれたので、さっそくそれを食べようということになったのだが、その時僕はとんでもないことに気がついた。
天井の一部から雨漏りしているのである!
「わ、雨漏りだ!」
僕は慌ててバケツを持ってきて雨漏りから垂れる水を受け止めた。
するとそれを見ていた友だちが言った。
「あぁ、やっぱりか。ごめん」
なぜ彼が謝るのだろうか。
「どういうこと?」
僕がそう聞くと、彼はため息をついてから言った。
「俺、雨漏り男なんだよ。なぜか俺が行く先々で雨漏りが起こるんだ。二十歳を越えてから急になっちゃって……」
彼は「ごめん、迷惑かけらんないから帰るわ」と言って帰っていった。
彼がいなくなると、雨漏りは嘘のように直った。
ううむ、雨男ならぬ雨漏り男とは……。難儀なことだ。
彼はいいやつなので、なんとか力になれないかと僕は考えた。
色々と調べた結果、いわゆる”星”を変えられる祈祷師がいるらしいことが分かった。
彼はきっと”雨漏りの星”の下に生まれたのだろう。
僕はさっそく彼に連絡をして、一緒に祈祷師の元に行ってみることにした。
彼のことを見た祈祷師は言った。
「う〜ん、これは難しい……。この星を完全に取り除くのは難しいでしょう。他のものに代替、という形になってしまうかもしれません」
それを聞いた彼は「それでも大丈夫です。お願いします」と言った。
「行く先々で雨漏りして、もう大変なんです」
彼の必死の訴えを聞いた祈祷師は「分かりました」と頷いて祈祷を行ってくれた。
僕と彼は祈祷師にお礼を言ってその場を後にした。
後日。
友だちが僕のアパートに遊びに来た。
祈祷してもらった成果はあったようで、雨漏りは発生しなかった。
彼は言った。
「あれから雨漏りがなくなったよ。……だけどなぁ」
「どうかしたのか」
「どうも、お世辞とか言えなくなっちゃったみたいなんだよ。いつも本音がダダ漏れになっちゃうんだ」
コメント