小狐

ショートショート作品

一夜湖

「今夜、空いてるか」 釣り仲間の友人が電話をかけてきて、藪から棒にそんなことを聞いた。 「空いてるには空いてるけど、なんだい」 「釣りに行かないか」 「今夜って……夜釣りか」 「そう」 ...
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箪笥の肥しの秘法

「へぇ! 良い箪笥を持ってるじゃないか」  一人暮らしの俺の家に遊びに来た友人が言った。 「あぁ、それ。実家を出る時に親が譲ってくれたんだけど、正直持て余してるんだよね」  大学進学を機に実家からもらってき...
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名波さんの耳

 営業二課の汐留さんに「名波の耳のこと知ってる?」と聞かれた。  名波さんと言えば、少しふくよかな感じだけど人当たりもよく、私が密かにちょっと素敵だなと思っている男性社員のことだ。 「耳、ですか?」 私がそ...
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味のよく染みた鍋

「ふ〜食った食った」 そう言って腹を叩いている友人に俺は聞いてみた。 「なぁ、今日の鍋、少なかったと思わないか」 「へ?」 「なんていうか、入れた材料よりも食べた気がしないというか」 「あぁ...
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声床

「最近あるビジネスを始めてね」 俺は学生時代からの友人にそう言った。 「へぇ、どんなビジネスだい?」 「これだ」 俺は"声床"を取り出した。 「うわ、なんだいこりゃ」 「これはぬか床...
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プールを泳ぐ学ランの怪

 学校の七不思議というものがある。 「音楽室のピアノが一人でに鳴る」だとか「校庭にある銅像が夜に動く」だとか、そんな噂。  私の通う中学校にもそんな七不思議がある。  その一つに「プールを泳ぐ学ラン」という...
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芽が出る人間

 新しい会社を立ち上げようと考えた時、俺はすぐに苗木に声をかけた。  苗木は学生時代の友達で、ある特異体質の人間だった。  それは頭から芽が生えるというもの。  学生時代、苗木の頭に芽が出ることを発見した俺はその...
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祈願刀

 私が高校受験の勉強を始めた頃、父が私を部屋に呼んだ。 「今年は受験だな」 「うん」 「早いもんだなぁ」  父はそう言って何やら感慨深そうにしている。 「何、改まって?」 「うむ。実はな」 ...
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知覚花瓶

 私と同じく在宅ワーカーをやっている友達の理恵がこんなことを言った。 「あんたストレス溜まってるんじゃないの〜?」 「分かる? 最近クライアントからの戻しが多くてさ。参ってるんだよね」 「あらら。あ、じゃあさ、いい...
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代わりトイレ

 同じマンションに住むママ友の部屋でお茶会をしている時、私はお手洗いに行きたくなった。 「ごめんなさい、お手洗い借りてもいいかしら」  私がそう言うと、彼女は突然「前に夫の仕事について聞いてくれたことがあったわね」とつ...
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