ショートショート作品

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センスのいい温泉

 僕は一人、温泉宿にやってきた。  お笑い芸人を目指しているのだが、最近あまりにも疲れが溜まっていたので自分へのたまのご褒美に、と温泉につかりにきたのである。  普通の温泉では面白くないので、秘湯と呼ばれる温泉にやってきた...
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エアドクター

 彩花は今、婚活の一環で一人の男性と向き合って食事をしている。  二人の会話は弾んでいるようだ。  そんな二人の横に医師が一人立っていて、忙しく手を動かしている。  彼は「エアドクター」と呼ばれる医者である。 ...
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睡眠投資

 睡眠貯蓄というものがあると同僚から聞いた。 「"寝溜め"っていう言葉があるだろう? 暇な時に寝ておいて、その睡眠を貯めておけるんだ。忙しくて睡眠時間が取れない時には、貯めておいた睡眠を引き出すことで体調管理ができるんだ。貯めるだ...
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気の置けない座布団

 何気なく入った古道具屋さんで、気になる座布団を見つけた。  なぜだか妙に魅力を感じる。 「それは気の置けない座布団です」  店主らしい女性が話しかけてくる。 「その座布団に座ると、本人の意思とは関係なしに...
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お参り風

「まーちゃん、窓を開けてくれる?」  寝たきりのおばあちゃんに頼まれて、私は窓を開けた。  おばあちゃんはたまにそう言うのだけれど、五分くらいするとすぐに閉めて、と言うのだ。  今日は曇りで、お天気もよくないのにど...
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選眼フォーム

 私は丘の上にあるコヤギ博士の研究所へとやってきた。  いつも鍵が開けっ放しのドアを開けると、コヤギ博士がおかしな踊りを踊っていた。  腰をくねくねと回しながら踊る博士。  おかしくなってしまったのだろうか……!?...
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肉抜き人間

 秘書課に配属された僕は、先任の高橋先輩から引き継ぎを受けた。  高橋先輩が言った。 「よし、表の引き継ぎはこれで終わりだね」 「表……?」  どうやら高橋先輩の話では、表に出してはいけない"裏"の引き継ぎ...
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白衣のお医者さま

 息子が入院した。  軽い風邪だったはずが、こじらせて肺炎を患ってしまったのである。  面会時間が過ぎた後も、私は無理を言って病室に泊まらせてもらった。  とても一人で家に帰る気にはなれなかった。  ...
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todo鴨シール

 大学の食堂に行くと、友達がスケジュール帳にシールを貼っていた。  鴨のシールだった。 「何それ、かわい〜」  私がそう言うと、友達は顔をあげてにこりと笑った。 「これはね……」  と、その時、どこ...
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時わすれの雑誌

 僕は私立探偵、小狸信史。  最近ある雑誌の噂を聞いた。  それは「時わすれの雑誌」というものである。  なんでもその雑誌は山手線の車内に落ちているそうで、その雑誌を手に取ったが最後、あまりの面白さに気づいたら一駅...
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