朝起きると、ミサからメッセージが入っていた。
何かなと思いながらアプリを開くと、URLが貼られていた。
ミサはよく面白い動画やアプリなどを見つけるとそのURLを送ってくる。
私は目を擦りながらURLをタップした。
それはアプリのURLのようで、すぐにアプリのダウンロードが始まった。
「また変な効果音の詰め合わせアプリとかかな……ふあぁ」
私が欠伸をした時、ダウンロード完了の通知音が鳴った。
「はや。ん? 何これ……種?」
アプリのアイコン画像は茶色い小さな種だった。
タップしてみると、アニメっぽい画面の畑が表示される。
そこにひゅーっと種が落ちていく。
右上にジョウロのアイコンが出たのでタップしてみると、ジョウロから水が出て種に水をやることができた。
「植物を育てる系かなぁ」
私から水をもらった種はなんだか喜んでいるように見えた。
ちょっと可愛いかも。
私はスマホを置いて着替えを始めた。
それから私はスマホをいじる度にそのアプリを立ち上げた。
なんとなく水をあげるだけで種は育っていき、芽が出た。
それ以外何もやることはないのだが、それはそれでシンプルでなんだか癒される。
種から出た芽はどんどん大きくなり、お花屋さんで売っている苗くらいの大きさになった。
てっきり花が咲くのかと思ったが、それから苗はどんどん大きくなっていき、一日で立派な木になった。
普通こういうアプリの場合、花になって、それから種になって、またやり直して……という感じだと思うのだが、なんだか変わったアプリだ。
異変が起きたのは、その日の夜だった。
私はSNSアプリを開こうとスマホを手に取った。
しかしなぜかSNSアプリが開けない。
「あれ。なんだ、これ……」
よく見るとそのアイコンにツタのようなものが絡まっていた。
ツタは、あの種のアプリから伸びていた。
「なによ、これ……!」
私は色々なアプリをタップした。
しかしどのアプリも開けない。
「もう、いい加減にしてよ!」
私はあの種のアプリをアンインストールすることにした。
アプリのアイコンをタップし続ける。しかし反応がなかった。
私はあらゆる方法を試してアプリを落とそうとしたが、無駄だった。
「なんなの、これ……。ウイルス?」
何をやってもダメなので、私は明日ショップに行って直してもらおうと思い、その日はベッドに入った。
翌朝。
「うわぁあぁあ!」というお父さんの叫び声で目を覚ました。
「何……?」
ベッドの上で目を開ける。
と、その瞬間、目の前にあり得ないものがあった。
それは太い木の枝だった。部屋中に張り巡らされている。
「美咲! 大丈夫か!?」
ドアが開いて、お父さんが顔を出した。
「逃げるぞ!」
お父さんに手を引かれて私は家の外に飛び出した。
お母さんはすでに逃げ出していたようで、私を見るとぎゅっと抱きしめてくれた。
「どうなってるのこれ……」
お母さんが消え入りそうな声をあげる。
家の窓という窓から木の枝が飛び出していた。
「こんなの、どこに連絡すればいいんだ」
スマホを持ったお父さんが途方にくれている。
私はそれを見て、はっと気がついた。
もしかして……。
私はお母さんの手を離して、家の中に戻った。
「美咲、どこに行くんだ! 戻ってきなさい!」
お父さんの声を無視して、階段に張り巡らされた枝をなんとかよけて二階に上がる。
私の部屋は、さっきよりもたくさんの枝や葉っぱで満ちていた。
それを一つ一つ強引にどかしながら前に進む。
あった。
机の上に置かれたスマホから、太い幹が飛び出している。
「やっぱり……!」
私は枝で阻まれながら腕を思い切り伸ばした。
スマホが手に触れる。
「もう……ちょっと……!」
私は足と腕に力を入れてスマホを掴む。
そして手探りで電源ボタンの場所を探し、長押しした。
スマホの電源が切れた。
その瞬間、スマホから飛び出していた木はしおれて、みるみるうちに枯れていった。
それから我が家にはお父さんが呼んだ業者の人がやってきた。
私は野次馬でいっぱいになった家を逃げ出し、ショップに向かった。
別のスマホに替えてもらう手続きをして、私は元のスマホを処分してもらうことにした。
スマホを手渡しながら私は店員さんに尋ねた。
「それ、再利用とかないですよね」
「はい。粉砕機で完全に使えない状態にしますので」
私はそれを聞いて安心し、ショップを後にした。
結局その日は学校を休み、家は枯れ木の搬出にまだ時間がかかると言うことだったので私たちはみんなでホテルに泊まった。
そして次の日、私はホテルから学校へ向かった。
学校に着くと友達みんなに「昨日、どうしたー?」と聞かれたが、本当のことを言うわけにもいかないので適当に答える。
「あ、みんなの連絡先教えて。スマホ替えて消えちゃったからさ」
私がそう言ってスマホを取り出すと、友達もみんなスマホを取り出して言った。
「そう言えば、昨日美咲がメッセで送ってくれたこれ、面白いね」
友達みんながスマホの画面をこちらに向ける。そこにはあの種のアイコンが表示されていた。
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