私は窓の外をぼんやりと眺めながら幼い日のことを思い出した。
その日、私は夏祭りに来ていた。
見るもの全てが魅力的に見えるお祭りで、私はあるお店を見つけた。
夏祭りが催されている神社の境内から少し離れた小さな池にたくさんの紐が垂れている。
そして池の中からはカラフルな光が漏れ出ていた。
「流れ星がとれるよ」
池のほとりで簡易イスに座っているおじさんがそんな風に客を呼んでいた。
簡素な立て看板には”流星紐くじ屋”と書いてある。
私は後で綿あめを買う予定だったお金をおじさんに渡した。
「どれでも好きな紐をお引き」
おじさんに言われて私はたくさんある紐の中から一本を選んで引いた。
すると池の中からころりと星が出てきた。
けれどそれはわざとらしい星型をしたおもちゃの照明だった。
おじさんは「いい色だねぇ」なんて黄色い歯で笑っていたけれど、私は怒った。
「こんなの流れ星じゃないじゃん! 流れ星はこんな形してない!」
するとおじさんは慌てて私を取りなした。
「分かった、分かったよ。お嬢ちゃんには後で本物をあげるから」
「後でって、いつ!?」
「おじさんは今流れ星を捕まえる方法を研究している最中なんだ。だから……そうだねぇ、お嬢ちゃんが大人になったらあげるよ」
そんな風に言われて、私は仕方なく安っぽい星型の照明を引きずるようにして持って帰ったのだった。
***
「そんなこともあったなぁ」
大人になった私は部屋で独り言を言った。
今になってなんでそんなことを思い出したのだろう。
あぁ、そうか。今日がお祭りの日だからだ。
子供の頃は毎年のように行っていたけど、大人になってからは行ったり行かなかったりだ。
もう寝ようと思い私は電気の紐を引っ張った。
しかし消えない。
あれ、おかしいなと思った私は妙なことに気がついた。
一本しかないはずの電気の紐が二本ある。
すると次の瞬間、暗かったはずの窓の外が異様に明るくなってきて……。
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