気のせいの精

ショートショート作品
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 色々なことを気にしがちな私は、「気のせいの精」を雇った。

 ある占い師に紹介してもらったのである。

 気のせいの精は、私が「みんなから変に思われたらどうしよう」とか思った時にやってきて、

「気のせいだよ」と言ってくれる。

 あまり費用はかけられないので、一番安い気のせいの精をお願いしたら、いつも寝っ転がりながらポテトチップスを頬張っている太った気のせいの精がやってきた。

 やる気あるのかなぁ、と私はいぶかしんだけれど、気のせいの精は一応ちゃんと仕事をしてくれた。

 気のせいの精がやってきてくれたおかげで、私はいくぶんか気が楽になった。

 私が何かを気にすると、気のせいの精がやってきて「気のせいだよ」と言ってくれる。

 それだけのことが嬉しいのである。

 恋人ができたばかりの時は、気のせいの精にたくさんお世話になった。

「あんなこと言って、嫌われちゃったかな」

 そんなことをつぶやくと、気のせいの精がやってきて「気のせいだよ」と慰めてくれる。

 これまで、相手のことを気にしすぎて恋愛がうまくいかなかった私だけれど、気のせいの精のおかげで恋人とうまくいき、結婚することになった。

 結婚をしてからは、気にしすぎな私のことを、夫がフォローしてくれるようになった。

 気のせいの精は、必要がなくなったら消えてしまう。

 あの太っちょの気のせいの精が消える時に「今までありがとう」と言うと、いつもぶっきらぼうな気のせいの精が泣いているように見えた。

「泣いているの」

 私がそう聞くと、気のせいの精は「気のせいだよ」とそっぽを向いて、そのまま消えて行ってしまった。

 いなくなった気のせいの精に、私はもう一度だけ「ありがとう」と言った。

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