こたつの雲

ショートショート作品
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 我が家に念願のこたつがやってきた。

 大晦日、さっそく家族で入ってみようということに。

 こたつに入るとすぐ眠くなって、僕は寝てしまった。

 はっと目を覚ます。

 と、こたつの上に何か浮いているのが見えた。

 なんだ……あれ?

 雲のようなものがふわふわとこたつの上空を漂っている。

 なんだろう、と思ったが、起き上がる気力もない。

 周りを見ると、家族全員がこたつに入って眠っていた。

 え、なんだろう、おかしい。

 電気も消えていて、部屋は真っ暗で、今は明らかに夜中だ。

 起き上がらなければ、と思うが、どうしても体を動かすことができない。

 まさか、と僕は思った。

 このこたつが、家族全員のやる気を奪ってしまったのではないだろうか。

 だから体を起こすことができないんだ。

 このままではまずい。

 動かないと、と思うが、体はぴくりとも動かない。

 と、カーテンを開けたままの窓から日が差し込んで来た。

 いつのまにか新年になっていたようだが、体が動かせない。

 たまに家族が目覚めている気配を感じるが、僕と同じように動けないのだろう。

 このままではみんな餓死してしまう。

 と、その時、勢いよく玄関の扉が開く音がした。

 近所に住む叔母さんの声が聞こえる。

 バイタリティのある叔母さんだ。

 お母さんがいない時などに、たまに僕たちのお世話をしにきてくれるので、鍵を持っていたのだ。

 助かった!

 叔母さんが部屋に入ってきて言う。

「なぁに、新年早々みんなでぐうたらしてぇ。あ〜、寒い寒い」

 そう言いながら叔母さんはこたつに入ってしまう。

 やばい……!

 叔母さんはこたつに入るなり、とろんとした目になって「なんだか出たくなくなったわねぇ」なんて言いながら眠ってしまった。

 すると、こたつの上空を漂っている雲がでかくなった。

 しめた!

 僕は雲に向かって懸命に頭だけを起こそうとした。

 もう少しだ。

 少量の雲のかけらが、口に入った。

 瞬間、僕の体は動くようになり、僕はこたつから抜け出すことができた。

 それから僕は雲をみんなの口に押し込んだ。

 ようやくみんな目を覚まし、こたつから抜け出ることができた。

 結局、あのこたつは不気味なのですぐ売ることになった。

 しかし、おかしなことが起きている。

 お母さんがなんだかすごく元気になって、叔母さんがおとなしくなったような気がするのだ……。

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