私は責任者としてテレビの取材に答えた。
「弊社のコールセンターは……」
こうして取材に答えるのは私のような人間だが、コールセンターで実際に稼働しているのはAIである。
コールセンターに電話してきたクレーマーは、AIに向かってクレームを言うのだ。
AIが高性能なので、気が付かないのである。
もちろん、そのことは社外秘ではあるが。
ほとんどのクレームはAIのみで対処できるが、まれにどうしようもない時がある。
そんな時は、人間心理を知り尽くした私が対応するのだ。
私一人いればコールセンターを回せるなんて、効率的な世の中になったものだ。
取材が終わり、私が自席に戻ると、ヘルプが入った。
AIだけでは処理しきれないクレーマーの登場だ。
私はふぅっと息を吐いてから電話をとった。
「もしもし、お電話かわりました……」
***
薄暗い部屋で、一人の男がパソコンのディスプレイを見ながらほくそ笑んでいる。
男は言った。
「ようやく上司が出てきたか。さぁ、私が作ったクレームAIを言いくるめられるかな……」
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