パッチン占い

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「パッチン占い」という占いがよく当たると噂に聞いた。

 どんな占いなんだろう?

 占い好きな私は早速お店に行ってみることにした。

「こんにちは」

 お店で私を出迎えてくれたのは、私と同い年くらいの男性だった。

 男性の、それも若い占い師さんは珍しいので驚いた。

「立樹と申します。よろしくお願いします」

 男性がこちらに手を差し伸べ、握手を求めてくる。

 私がその手を取ろうとすると、パチンッと静電気が走った。

「おっと、大丈夫でしたか」

「あ、はい。平気です」

「失礼いたしました。ではこちらにどうぞ」

 私は立樹さんに案内されて店内に入った。

 店内の様子は占いの館にしては随分シンプルだった。

 白いテーブルと白い椅子が置いてあり、小さめの加湿器が設置されている、それだけのお部屋。

 立樹さんは私に椅子を勧めてから言った。

「さて、何を占いましょうか」

「あ、あの仕事運について占っていただきたいのですが」

「分かりました。ではさっそく占いを……と言いたいところですが、実は占いの工程は先ほどすでに終わっておりまして」

「え?」

「私の占いは静電気で占うものなのです。お客様のまとう運勢は全て静電気に現れます。私はそれを先ほどのように感じ取るわけです」

 最初に握手をしようとした時のことだろう。

 なんとも珍しい占いだ。

「お仕事についてですが、お客様はもしかしたら近々昇進されるかもしれません」

「えぇ!?」

「あなたは昇進を迷うと思いますが、そのお話はぜひお受けした方がいいでしょう。ただしその際、一番信頼できる人と一緒に仕事ができるという条件付きでお受けになるといいと思います」

 そう言って立樹さんはにこりと微笑んだ。

 
 それからものの一ヶ月で、私は昇進することになった。

 人事部から昇進を伝えられた時、私は立樹さんのアドバイス通り一番信頼できる同僚と一緒に働けるならという条件付きで昇進を受け入れた。

 その結果、仕事がものすごくうまく回るようになったのである。

 私は立樹さんにお礼を言うため、またお店にやってきた。

 何が好みかなぁなどどと色々迷った挙げ句、ハンカチを買った。

 男性用の、普段遣いできるハンカチ。

 お店の前までやってきた私は、今更「占いのお礼なんておかしいかも!」と突然心配になってきた。

 ドアの前でドギマギしていると、ふいに扉が開いて「もう来てくださらないかと思いましたよ」と立樹さんが笑顔で私を迎えてくれた。

 ちょっと迷いつつ「あの、占いのおかげですごく仕事がうまく行くようになったので、これを」とハンカチを差し出す。

「え、いいんですか?」

「はい。ご迷惑でなければ、ですが」

「ありがとうございます。とても嬉しいです」

 立樹さんは笑顔でハンカチを受け取ってくれた。

「あ、じゃ、じゃあ私はこれで」

 そう言って私が帰ろうとすると、立樹さんが「あ、待って!」と私の腕を掴んだ。

「え……?」

「あの、今日も占っていきませんか。お代は結構ですから」

「いえ、そんなわけには」

「ハンカチのお礼です」

 そう言われて私はのこのことお店の中に入ってしまう。

「今日は何を見ましょうか」

「あ、じゃあ……どうしよう。恋愛運とか」

「恋愛ですね。ふむふむ。そうですね……運命の人はすぐ近くにいるようです」

「えっ」

 それって、まさか。いやいや、そんな訳ないよね。

 なんて考えながら、私はおや? と不思議に思った。

 今日はまだ静電気が走っていない。

 じゃあどうやって占ったのだろう。

 目の前の立樹さんを見ると、なぜか顔を真っ赤にしている。

 ゆでダコのようになった立樹さんが言った。

「すみません。白状します。実はあなたと初めて出会った時、電気が走ったんです。静電気なんかよりも何倍も強力な電気が……」

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