「詫び状ボトル」というものが流行っている。
自分がなにか謝りたいと思っていることを紙に書いてボトルに入れ、海に流すのだ。
海に流しても絶対に割れないというボトルが飛ぶように売れている。
自分が謝りたいことを書き出すとすっきりする。
そして書き出したどうしようもない気持ちを、海に還すのだ。
私はある離島で研究員として働いている。
私の仕事はデータのチェックだ。
詫び状ボトル用に絶対に割れないボトルとして販売されているボトルには実はGPSと駆動装置が内蔵されている。
みんなが謝りたいことを書いて海に流したボトルはこの離島に集まってくる。
みんなが何に謝りたいと思っているのか。
そのデータをボトルから集め、ビックデータとして秘密裏に販売しているのだ。
謝罪と救済はセットである。
訪問販売員、占い師、霊媒師。
多方面に謝罪のデータは売れるのだ。
こんな仕事をしている私だが、たまに仕事に押し潰れそうになる。
みんなの謝罪を密かに集めているという罪悪感がはっきりあるからだろう。
私は自分の懺悔の気持ちを書き記した紙をボトルに入れ、海に離した。
あれはただのボトルである。
いずれどこかで割れて、海に還るだろう。
私だけが本当の詫び状ボトルを出し続けているやるせなさを感じながら、私は研究所へと戻った。
コメント