「それでは、コンペの結果については追って連絡します」
そう言われて、私はため息をついた。
またあれか。あれは苦手なのだ。
私は、あの最新の連絡方法が苦手だった。
電話だと言った言わないが発生し、メールだと先方に届いてないかもと不安になる、ということで、一周回って直接連絡した方がいいということになったらしい。
しかし、連絡したい人本人がいつも直接出向くわけにはいかない。
そこで、連絡専用の人間が連絡に向かうのだ。
私は、そのことについてまだ知らなかった頃、夜道で突然「佐々木さん!」と、大きな声で背後から声をかけられ、逃げた。
元陸上部の脚力を活かし、その時は見事逃げ切ったのだが、翌朝、通勤途中にまた追いかけられ、とうとう駅で追いつかれてしまった。
すると、私に追いついた男性は、連絡用の紙を差し出したのである。
そう、まさに「追って連絡する」のだ。
「佐々木さん!」
そんなことを考えていたら、背後から声をかけられた。
連絡員だ。
「コンペの結果です」
彼はそう言って一枚の紙を差し出す。
結果は……落選。
はぁ、転職しようかな。
あ……そっか。
私は帰っていく連絡員の背中を見つめながら、転職を決意した。
***
「100mのタイムは13秒台ですか。十分ですね。最近は女性の連絡員希望の方も多いですから。ほぼ採用だと思いますが、結果はまた、追って連絡します」
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