コヤギ博士に呼ばれて、私は博士の研究所に向かった。
研究所に着くなり、私は度肝を抜かれた。
博士が畑で奇怪なダンスを踊っていたのである。
博士は両膝を深く曲げ、両手を忙しなく動かしている。
「は、博士! おかしくなっちゃったんですか?」
「おぉ、君か!」
博士はダンスをやめた。
「今、孫の手を栽培しているんじゃよ」
「孫の手!?」
「あぁ。正確には孫の手に似た植物だ。そんな植物があれば、誰でも道端で背中をかけるだろう? 今のは、孫の手が生えてきた時にかいてもらう為の練習だったんだよ」
博士がそう言って、また奇怪なダンスを始めた。
博士が上機嫌で言う。
「孫の手が生えてきたら、きっと大きな話題になるぞ! 夢のテレビ出演だ!」
そうかなぁ……と思ったが、黙っておいた。
私の予想に反して、コヤギ博士の発明はみるみる噂になり、博士のテレビ出演が決まった。
しかし、おそらくコヤギ博士の当初の構想とは違った形で、だが。
テレビの中でキャスターが言った。
「さぁ、今日は丘の上の研究所から、コヤギ博士にお越しいただきました。今日はコヤギ博士発案の”孫の手ダンス”を披露していただきます。博士、痩せると噂の、この膝を曲げて両手を動かすダンスですが、どのように発案されたのですか?」
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