ある日、こんな夢を見た。
目の前に長くて太い丸太のようなものが浮いている。
丸太はずーっと遠くまで伸びていた。
なんだろうと思って丸太をつついてみたら、なんだかブニブニしていて気持ち悪かった。
と、その時、遠くの方から「おーい!」と声が聞こえてきた。
なんだろう、と思っていると、遥か彼方からものすごい速さで顔が飛んできた。
「ぎゃあぁあ!」
私は叫び、そこで目が覚めた。
一体あの顔はなんだったのだろう。
そんな夢を見た日の夜、私は寝るのが怖かった。
もしまたあの変な夢を見たら。
私は恐怖におののきながら、それでも眠りについた。
すると目の前に、あの顔が浮かんでいた。
「ぎゃあぁあ!」
私は夢の中で逃げようとしたが、顔が「待って、逃げないで!」と私を止めた。
見ると、顔はすまなそうな表情でこちらを見ている。
そして更によく見ると、その顔の持ち主である男には長い長い首がついていた。
昨日、私がつついた丸太は男の首だったのだ。
男の顔は言った。
「最近占い師に占いをしてもらってね、そうしたら”もうすぐ運命の人に出会える”と言われたんだ。それで現実でも夢の中でも首を長くして待っていたんだけど、そうしたらこんなことになってしまったんだ」
納得できるようなできないような話である。
「首はこんなだけど、僕は普通の人間だよ!」
「は、はぁ……」
「それでね、首がどんどん伸びるもんだからその首を活かして辺りを探していたら君がいたというわけ。きっと、君が運命の人なんだ!」
「え、えぇえ!?」
「君はどこに住んでいるの? つまり、現実世界という意味で。僕はね……」
そこで私はハッと目を覚ました。
胸のあたりがドキドキ言っている。
それは恐怖とは違った感情だった。あんな変な首だったのに。
その日、私はなんとなくふわふわしたような気持ちで過ごしていた。
と、お昼ごはんを買おうと思って立ち寄ったコンビニで、なんと彼の姿を見つけた。
彼は店員としてコンビニのレジに立っていたのだ。
「あっ!」
私は思わず彼を見てそう叫んだ。
彼と目が合う。
私は思い切って彼に話しかけた。
「あ、あの……」
「はい、なんでしょう?」
彼は他人行儀な調子でそう言った。
何、覚えてないの!?
「あ、いや、その……。なんでもないです」
私は気まずい空気のままコンビニを出た。
別のコンビニに向かいながら、私は心の中で彼に毒づいた。
ちくしょう、今日夢であったら文句を言ってやる。
その長い首を洗って待ってろ!
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