面倒がみにくいアヒルの子

ショートショート作品
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 ある日、私が道を歩いていると、どこかから「ぐわー、ぐわー」という鳴き声が聞こえてきた。

「な、何!?」

 慌てふためいた私があたりを見渡すと、そこにアヒルがいた。

 しかしただそこにいたのではない。

 なんと瓶の中にいたのだ。

「あなたそれどうやって入ったのよ!?」

 私は瓶の中のアヒルに聞いたが、アヒルは「ぐわー」と鳴くだけだった。

 どうしたものかと思い、とりあえず私はアヒルを瓶から出そうとした。

 しかし、頭はおろか、足も通りそうにない。

 本当に、どうやって入ったのだろう。

 これじゃまるでボトルシップである。

 私はアヒルごと瓶を持ち上げ「ごめん!」と言いながら地面に叩きつけ、割ろうとした。

 しかし瓶は割れなかった。

「どういう素材なの、これ……」

 仕方がないので、私はとりあえず瓶とアヒルを持ち帰ることにした。

 家に帰った私はぐわー、ぐわーと鳴くアヒルに野菜などの餌をあげた。

 するとアヒルはぐわっぐわっと元気そうに鳴いてそれを食べた。

 どうしたものかと思ったが、連れ帰ってきてしまったのだから飼わないわけにはいかない。

 私はとりあえず本屋さんで「アヒルの飼い方」なんて本を買ってきて読むことにした。

 アヒルがやってきてから数日経ったある日、いつも元気なアヒルが瓶の中で座り込み、じっと動かなくなった。

「どうしたの!?」

 私はまた慌てふためいてアヒルに問いかけた。

 アヒルは答えなかったが、そのお腹の隙間からあるものが見えた。

 それは卵であった。

「げぇ〜!? その中で生まれるの!? あぁ、でも生まれたばっかりだったら瓶の口から出して普通に育ててあげられるかも……」

 私はとりあえず卵か孵化するのを待つことにした。

 次の日。

 アヒルはもういつも通りになっていた。

 卵もない。

「え、もうかえったの!?」

 私は慌てて瓶の中の雛を探した。

 しかし、どこにもいない。

 代わりに、小さな瓶の破片のようなものが見つかった。

「なんだこりゃ」

 私は虫眼鏡でその破片をよく見てみた。

 するとそれは小さな小さな瓶だった。

 そしてその中から「ぴー」という鳴き声が聞こえた。

 あの小さな瓶の中に雛がいるのだ。

「なんてこった!」

 私は慌てふためき、とりあえずあの小瓶の雛に餌をあげるため、ピンセットを買いに走った。

 走りながら私は、ふとあることに思い至った。

 あの、最初に拾ったアヒル。

 あの子にもお母さんがいるのだろうか。

 だとしたら……。

 私は、いつの日か「ぐわーー!」と大きなアヒルの声が空から聞こえてきやしないかと心配しながら、お店までの道を走った。

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