仕事の関係で辺鄙な村に泊まることになってしまった。
その村にある宿には古い井戸があるらしい。
そしてその井戸の中からは鈴の音が聞こえるそうなのだ。
宿の主人から「鈴の音が聞こえても気にしないでくださいね」と言われた。
夜中になり、なんとなく寝苦しく寝返りを打っていると、どこかからチリンという音が聞こえた。
「助けてーーー!!!」
突然女性の悲鳴が聞こえてきたので跳ね起きた。
さては、誰か井戸を覗きに行って落ちたな!?
急いで着替え、井戸のある場所まで走った。
「大丈夫ですか!?」
井戸の底に向かって叫ぶと、「助けてください!」と返事が聞こえた。
しかし暗くてその姿は見えない。
なんとか女性の姿を確認しようと目を凝らした時、勢い余って落ちてしまった。
「うわぁあぁあ!」
どぼんと井戸に落ちた。
なんとか水面から顔を上げるが、そこに女の姿はなかった。
「助けてーーー!!!」
井戸の底で叫び声をあげたが、その声は虚しく井戸に反響するだけだった。
叫ぶのをやめると、井戸から見える夜空と辺りは不気味なほど静まり返っていた。
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