中学生のユウヤは受験を控えていた。
勉強をしなければならないが中々思うように集中できない。
ある日、ユウヤはお母さんに「部屋の掃除は自分でやるから入らないで」と告げた。
誰も来なければ集中できると考えたのだけれど、誰も来なかったらそれはそれで寝転んでしまったりするのであった。
ユウヤが部屋で頭を抱えていると、コンコンとノックをして姉が部屋に入ってきた。
「なんだよ、姉ちゃん」
「どうやら、本気になったようだね? いいものを貸してあげるよ」
姉はそう言って、ユウヤにゴミ箱を渡した。
「このゴミ箱にはね、雑念を捨てられるの」
「雑念?」
「一時的に忘れたいことなんかを、紙に書いてこのゴミ箱に捨てる。すると、その忘れたいことを一時的に忘れることができるの。雑念を思い起こさせるものを直接捨ててもいい。私なんか受験の時はスマホを捨てたこともあったよ。一度このゴミ箱に捨てると、人に指摘してもらわないと思い出せないくらい忘れることができる。どうしても何かを思い出せなくて困った時はゴミ箱をひっくり返せばすぐに思い出すよ」
「なんで姉ちゃんがそんなの持ってるんだよ」
「おじさんからもらったの。ほら、おじさんって小説家をしてるでしょ。仕事に集中するために雑念を捨てようとこのゴミ箱を買ったらしいんだけど、雑念こそが小説に必要だって気づいたんだってさ」
ユウヤは姉からもらったゴミ箱を活用して、どんどん雑念を捨てていった。
そして最終的にはスマホを思い切って捨てて、勉強に専念した。
結局、スマホの存在は友達に言われるまで完全に忘れていたのだった。
そしてやってきた受験当日。
ユウヤは各教科順調に回答していったが、なぜか歴史だけが、勉強した内容が全く出てこなかった。
ユウヤは「なんで!?」と焦りながらシャーペンを握りしめた。
その時、ユウヤの母親が掃除の為にユウヤの部屋に入った。
と、歴史の教科書が机から落ちてゴミ箱に入っているのを見つけた母親は「仕方ない子ねぇ」と言いながら歴史の教科書を机の上に戻した。
さらに、ゴミ箱の中に入っていた紙ゴミをゴミ袋に移し替えた。
突然、ユウヤの頭の中に歴史の知識が溢れてきた。
ユウヤは、「試験が終わったら漫画の最新巻を買いに行こう」「今持っているゲームを中古で売って、新しいゲームを買おう」なんていう様々な雑念に襲われながら、なんとか試験問題を解いていったのだった。
コメント