お金持ちの知り合いに、なぜそんなにお金持ちなのかと聞いてみた。
すると知り合いはこんなことを言った。
「お金の帰巣本能を刺激するんだ」
「え?」
「鳥がどんなに遠くに行っても必ず巣に帰ってこられるのは、帰巣本能というものがあるからなんだ。だから、私のところにやってきてくれたお金に理想的な環境を整えてやって、帰巣本能を刺激するんだよ。お札のために部屋は適度に乾燥させて、硬貨は磨いてやったりね。そうすると、お金を使ってもめぐりめぐって戻ってくるんだ」
「へぇ……」
私は知り合いに教わった通りに、お金にとって理想的な環境を整えた。
すると、本当に使ったお金が戻ってくるようになったのである。
めぐりめぐって、使ったお金と同じかそれ以上のお金が戻ってくる。
おかげで私も小金持ちになることができた。
私は家を引っ越して、お金に専用の部屋を与えてやることにした。帰巣本能をさらに刺激するためである。
そんな私に、知り合いは「ほどほどにな」とアドバイスをした。
ある日、私は銀行にお金を入金した。
残高を見てほくほくしながら帰路に着く。
その日の夜中、突然ピンポーンと呼び鈴が鳴った。
不審に思いながら出てみると、銀行強盗がよく使う目出し帽を被った男がそこに立っていた。
「何故かこの分をあんたに届けなきゃいけない気がして」
男はそう言って大量の札束を玄関先に置いて去っていった。
私は慌てて警察を呼んだ。
確かに帰巣本能を刺激するのも、ほどほどにしないといけないな……。
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