気がつけば大学生活も後半。いよいよ進路を決めなければならない。
だけど、僕は自分が何をしたらいいのか分からなかった。
そんな時「天職弓」の話を聞いた。
なんでも、自分の天職を当ててくれる弓らしい。
山から矢を放って、その矢が刺さった人の職業が自分の天職なのだという。
ちなみに矢は無痛であり、そもそも普通の人には矢自体見えないそうだ。
天職弓は山奥の神社にあった。
僕が訪ねていくと、神社の宮司さんが「ようこそ」と僕を迎えてくれた。
「まずお清めです」
そう言われて僕は手や体を十分に清めた。
そして願いを込めた矢を持ち、宮司さん指導の元、弓を構える。
天に向かって矢を放つと、矢は雲を裂いて空の向こうに消えていった。
宮司さんが僕から弓を受け取りながら言った。
「それでは山を降りて矢を探しに行ってください。刺さった矢を抜かないとその職業にはつけません」
「分かりました」
僕は宮司さんにお礼を言ってから、山を降りた。
矢の刺さった人には矢が見えないから迷惑をかけることはないが、とはいえ自分の為にも早く見つけないと、と思う。
僕は、僕の放った矢の刺さっている人を探し回った。
どうやら身の回りにはいないらしい。
色々な業界や業態の会社説明会などに足を運んでみる。
見つからない。
その間にも他のみんなは次々と進路を決めていく。
僕は焦った。
どうしよう、全然見つからない。
そうこうしているうちに卒業が迫ってきた。
それでも矢は見つからない。
もう自分ひとりではどうしようもないと思った僕は、アドバイスを求めまた山奥の神社に向かった。
神社につくと、宮司さんが出迎えてくれた。
「あ!」
なんと、僕の放った矢が宮司さんに刺さっていた。
宮司さんは微笑みながら言った。
「私も驚きましたよ。自分に矢が刺さったのは初めてでしたので。普通の人には矢は見えないのですが、私はこういう職をしているので見えるようですね。まぁこの仕事はたくさんの仕事を知っていることが条件ですから、色々な仕事を探した経験は無駄にならないと思いますよ」
「はい、ありがとうございます!」
「さて……それでは矢を抜いていただけますか。歩く度にかつんかつんとどこかに当たってしまって、邪魔で仕方ないんです」
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