スイカ割り免許皆伝

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 あるところに、スイカ割りの名人がいた。

 名人は、目隠しをしてどれだけ回されても、正確にスイカを割ることができた。

 名人にはスイカの気配が分かるのだ。

 名人はその特技を活かしてスイカ割りをしていない時はスイカを売っていた。

 名人には良いスイカの気配が分かるのである。

 しかしそんな名人には一つ悩みがあった。

 冬にやることがないのだ。

 スイカ割りは夏の行事だし、スイカを売るのも夏しかできない。

 思い悩んだ悩んだ名人だったが、なんと名人は新たな特技を習得したのである。

 名人は目隠しをされた状態で「えぇい!」とあるものを振り下ろした。

 それは……杵だった。

 名人は「目隠し餅つき」の特技を会得したのだ。

 そしてその結果、名人はもち米の気配を察知できるようになり、やがて普通の米の気配も察知できるようになった。

 名人は良い米の気配を察知して、良い米だけを仕入れて販売を始めた。

 米の販売であれば一年中仕事ができるぞ、と名人は喜んだ。

 そしてまた、夏がやってきた。

 名人は目隠しをしてスイカ割りに挑んだ。

 名人が棒を振り下ろすと、キャー! という悲鳴が辺りに響き渡った。

 驚いた名人が目隠しを取ると、名人は海水浴に来ていた観光客のおにぎりに棒を振り下ろしていたのである。

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