彼のことが好きだ。
しかし、その「好きだ」という愛情が困りものなのである。
私は今まで付き合った人たちから「圧が強いんだよ」と言われてきたのだ。
好きになると、ぐいぐい行き過ぎるのが私の悪い癖である。
そこで私は「愛情圧測定器」を買った。
届いた測定器を抱きしめ、彼のことを思い出す。
ピピッと音が鳴り、測定器に「89」という数値が出た。
やばい、高すぎる。
この測定器で計測可能な愛情の最大値が100なのに、89は明らかに高すぎだ。
また圧が強いと嫌われてしまうかもしれない。
少し彼への気持ちを抑えないと……。
「なんか最近おかしくない?」
ある日、彼が言った。
「お、おかしくないよ」
彼への気持ちを無理やり抑えていることを悟られてはいけない。
あくまで自然に、気持ちを抑えないと。
しかし、ある日彼が家に遊びに来た時に愛情圧測定器が見つかってしまった。
「なにこれ?」
「あ、えぇと……」
私は彼に愛情圧測定器のことを白状した。
その値が高く出ていることも。
結局、抑えようとしても数値は全然変わらず、むしろ上がり続けるだけだったのだ。
すると、彼が言った。
「圧なんて、そんなの気にしないでいいよ。好きな人の圧が強くても気にならないし、むしろ嬉しいよ」
彼が優しく微笑む。
「本当?」
「うん」
じんわりと胸が温かくなる。
彼が「こうすればいいの?」と愛情圧測定器を抱きしめた。
「僕の愛情はどれくらいかなぁ」
彼がそう言った瞬間、愛情圧測定器がボンッと音を立てて壊れた。
コメント