抱かれ枕

ショートショート作品
スポンサーリンク

 私は今、新商品の開発に関わっている。

 その商品とは「抱かれ枕」である。

 自分で枕を抱くのではなく、優しく包み込むように抱いてくれる枕が欲しい、という社員の要望をアイデアにして作り出した商品だ。

 枕は動物をモチーフにして作った。

 枕の中にはバッテリーがあり、電気で動く。

 横に寝ると、様々なちょうどいいサイズの動物の枕が包み込んでくれるのだ。

 試作品が出来たので、私は白くまの抱かれ枕を試してみることにした。

 夜、白くまの抱かれ枕を横に置き、ベッドに横になる。

 すると、白くまがゆっくりと私を包み込んでくれた。

 あぁ、気持ちいい……!

 私はなんともいえない安心感に包まれて眠りについた。

 
 朝起きると、私はまだ白くまに包まれたままだった。

 ……ん?

 白くまが妙に冷たい。

 まさか、と思い、私は白くまの抱かれ枕を引き剥がそうとしたが、私を抱いたまま充電が切れたようで、白くまはそのままのポーズで固まってしまっていた。

 ど、どうしよう。

 電源を供給するためのコンセントは背中側についているので、このままでは充電もできない。

 仕方がないので、覚悟を決めてこのまま出社することにした。

 試作品は失敗。

 まずは電源の改良が急務だ。一晩保たないようではどうしようもない。

 あとは、万が一就寝中に充電が切れても手動で外れるように、緊急着脱装置もつけないと。

 そんなことを考えながら会社に向かうと、まだ誰も出社していなかった。

 誰かに外してもらおうと思っていたのにな、と思っていると、次々に社員が出社してきた。

 私はその姿を見てぎょっとした。

 社員のうち何人かは、コアラやキリンなどに抱かれたまま出社したのである。

コメント

タイトルとURLをコピーしました