私の通う小学校には、校庭にからくり時計が生えていました。
立派な木で、その幹の真ん中に空いた穴から本物の鳩が出てきて、ほっほーほっほーと鳴いて時間を教えてくれるのです。
私はこのからくり時計が大好きでした。
時折、学校で飼っている猫のミーコが鳩にちょっかいを出そうとするので、私は慌てて止めたりしていました。
ある日のことです。学校中が大騒ぎになりました。
なんとからくり時計の鳩がいなくなったというのです。
私は、まさかミーコが……? と考えました。
しかしどうやら違ったようです。
低学年の子が、あのからくり時計が欲しくて盗んでしまったそうです。
その子は誤って鳩を逃してしまったのだとか。
反省しているらしいのですが、これでは時間が分かりません。
私たちが切ない気持ちで空っぽの穴を見ていると、やれやれといった様子のミーコがトコトコと木に登りました。
そして鳩のいた穴に入ると、時報の代わりにニャーと鳴いたのでした。
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