線引寺

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 私は新卒採用担当者として新入社員採用の選考を行っていた。

 合格者は後一人しか出せない。

 しかし私は二人の学生で迷っていた。

 高橋さんかそれとも佐藤さんか。

 どちらも同じくらい良い学生さんなので決めきれずにいるのだ。

 そんな時、どうしてもどちらかに決められない時にその線引をしてくれる「線引寺」という寺の噂を聞いた。

 私はさっそく線引寺に向かった。

 私の話を聞いた和尚は「それでは線引を開始します」と言って、何度も何度もおみくじのようなものを引いた。

 さらには、おそらく二人の学生に似せたものだろう藁人形を使って滝行をしたりした。

 そして、ついに和尚が「決まりました」と言った。

「本当ですか!」

「はい。おっしゃるとおり甲乙つけがたいお二人でした」

「えぇ。それで、結果は……」

「高橋さんを採用するべきでしょう」

「なるほど! ありがとうございます!」

 私は和尚にお礼を言って寺を後にした。

 会社に戻り、私は佐藤さんにお断りのメールを送信してから高橋さんに連絡をした。

 すると、こんな返事が返ってきた。

「申し訳ありませんがお断りします」

「えぇ!? ど、どうして」

「申し訳ないお話なのですが、実は他社様と御社、どちらに入るか悩んでおりまして。その結果、線引寺の和尚様が……」

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