あれはまだ僕が学生だった頃。
僕は一人で東南アジアに旅行に行った。
旅行先で知り合った男と二人で小型船を借りて当てもない航海をした。
男の操縦する小型船が大きな岩に乗り上げ難破し、僕たちは何もない海で遭難してしまった。
僕たちは無我夢中で泳ぎ、無人島に漂着した。
無人島をさまよい歩くと、島の中央に石でできたルーレットのようなものがあった。
なんだろう、と思いながら僕たちはルーレットを回してみた。
ルーレットは水のようなマークのところで止まった。
と、ルーレットのそばにある土からぴゅーっと湧き水が出た。
喉が渇いていた僕と男はその湧水で喉を潤した。
もう一度ルーレットを回してみると、今度は食べ物のようなマークで止まった。
すると、近くにある木に食べられそうな実がなったのである。
試しに一つもいで食べてみると、みかんのような味がして美味しかった。
もう一度ルーレットを見ると、かなり確率は低そうだが船のようなマークもある。
僕は男と一緒にルーレットを回した。
何度かハズレが出た後、船のマークが当たった。
と、海岸の方から人の声が聞こえ、行ってみると船が停まっていた。
僕たちは無事救助され、島から脱出することができた。
日本に戻ったあと、一緒に遭難した彼に連絡をとってみた。
すると、彼が不思議なことを言ったのである。
「無事に帰った後、気になったのであの島に行ってみたら、島ごとなかったんだよ。それから色々な人に島の話を聞いてみたんだが、誰に聞いてもね、そんな島ないと言うんだ。それに、僕たちを乗せてくれたあの船。あの船についても、そんな船存在しないことが分かったんだよ」
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