ある日、庭に出て庭いじりをしていたら、地面からピューっとビールが出た。
色合いや匂いがビールなので、ぺろりと舐めてみたところ、完全にビールだった。
ビールは次々にあふれ出てくる。
ど、どうしよう!?
焦った私はとりあえずビールが出てくるところにホースをあてがい、ホースを家の中まで持っていってシンクにビールを流した。
「おーい! ちょっと来てくれ!」
私は大声で妻を呼んだ。
やってきた妻はビールを見て驚いた。
私が訳を説明すると、妻は言った。
「でもこれじゃあ、下水代がすごいかかっちゃうんじゃ……」
「なるほど、もしかしたらそうかもな……。あ、そうだ! じゃあいっそのこと売るってのはどうだ?」
「酒造法、みたいのがあるでしょ。ダメよ、勝手にお酒を売っちゃ」
「そうかぁ……。あ! じゃあ飲ませよう」
私は酒好きな友人を家に招いた。
「どうだ、うまいだろう」
私がそう聞くと、友人は唸りながら言った。
「あぁ、これはいいビールだ。どこのやつなんだ?」
「この辺の地ビールなんだよ」
「このあたりに地ビールなんてあったかなぁ」
友人は不思議がりながらガブガブとビールを飲んだ。
やがて友人はすっかり酔っ払って帰っていったが、それでも地ビールは出続けた。
飲ませるくらいではダメなようである。
ホースの先から出続ける地ビールを、とりあえず庭に出す。
地面から出てくる地ビールをそのまま地面に戻す形でホースを地面に埋めた。
とりあえずこうしておくしかない。
翌朝。
妻の悲鳴で目を覚ました。
慌てて庭に出た私は、やはり然るべきところに相談しなくては、と思った。
然るべきところとは、どこか分からないが……。
きっと地ビールのせいだろう。
庭に生えている木や花が、酔っ払ったようにぐにゃりと曲がっていた。
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