空想校庭

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 窓際の席になった時、校庭を見ながらぼんやり授業を受けていた。

 小学校の頃、校庭に野良犬が入り込んできてびっくりしたなぁ。

 そんなことを考えていると、まさに今、校庭に犬が入り込んできた。

 私は隣の席のよっしーに言った。

「ねぇ、犬、犬」

「どこ?」

「ほら、いるじゃん」

「え、どこ?」

「あそこだって!」

 先生が「こらぁ! そこ、私語しない」と怒る。

 私はよっしーに”ごめん”とジェスチャーで謝った。

 次の日。

 私はまたぼんやり校庭を眺めていた。

 昨日見たアニメ面白かったなぁ、あんなヒーローがいたらなぁと考えていると、なんと校庭にそのヒーローが立っている。

 え!?

 先生の目を盗んでこっそりよっしーに聞いてみるが、昨日の犬と同じくよっしーには見えないらしい。

 どんな原理かは分からないが、あの校庭は私の空想を現実に映し出すようだ。

 それから私は授業中に退屈すると、校庭の方を眺めて暇をつぶすようになった。

 
 やがて私は中学校を卒業し、高校に進学した。

 高校でも窓際の席になったので、校庭を眺めてみたが、高校の校庭に空想は現れなかった。

 あの校庭じゃなきゃダメなのか、それとも私のせい……?

 私は久しぶりに中学校に行った。

 担任の先生に挨拶をしてから校庭を見ると、校庭にはやはり空想が現れた。

 なぜか中学校の校庭じゃないとダメらしい。

 とはいっても、そんなにちょくちょく中学校に来るわけにはいかない。

 あぁ、寂しいなぁ。

 そんなことを思いながら校庭を眺めていた私は、あることを思いついた。

***

 
「ねぇ、せんせー、答え合わせー」

 生徒に声をかけられて、はっとする。

「あぁ、はいはい」

 私は、せっかく校庭に作った空想村で遊んでいたのにな、と思いながら教壇に戻った。

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