ある国で奇妙な出来事が起こった。
おかしな夢を見る人が続出したのである。
餓死している人の夢や夫の不貞が発覚した女性の夢など。
そんな、人の不幸に関する夢を見る。
この現象はなんなのか。
国の首脳は調査員を派遣し、原因を究明した。
すると、不幸の夢を見る人々にはある共通点があることが分かった。
日頃、外を動き回ることの多い人間が不幸の夢を見やすいというのである。
更に調査を進めると、新たな事実が判明した。
調査員が首脳に言った。
「不幸の夢には、ある蝶が関係しています」
「蝶?」
「はい。その蝶の鱗粉を吸うと、不幸の夢を見るのです」
「ううむ、にわかには信じられん」
「首相、今すぐ蝶を根絶やしにせねばなりません」
「なぜだ」
「蝶は人の不幸を吸っているのです。そして蝶は鱗粉によって不幸をばらまく。鱗粉を吸った人は不幸の夢を見ることで、不幸になる。不幸は伝播します。このままでは国が滅びかねません」
「むう、分かった。出来る限り早く蝶を絶滅できるような手段を考えてくれ」
「承知いたしました」
調査員が首脳の元を去っていく。
「大変なことになったな……」
そうため息をついた首相の所に、ひらひらと蝶がやってきた。
そして蝶は、首脳の首をぷすりと刺すと、ちゅうちゅうと何かを吸い始めた。
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