僕は今就職活動に勤しんでいるのだが、全然内定がもらえず焦っていた。
いい加減なんとかしないとやばい。
そんな時、内定をもらった友人がこんなことを言った。
「いいところを紹介してやるよ」
友人が教えてくれたのは”強味期限シール”という怪しげなシールを貼ってくれるところだった。
なんでも、短期間だけ自分に強みを付与できるシールらしい。
友人はそのシールを使って内定をもらったそうだ。
僕はさっそくそのお店にやってきた。
そこは店というより怪しげな事務所という感じの場所で、店には怪しげなお兄さんが一人いた。
お兄さんはにやりと笑うと僕に言った。
「どんな強みをつけたいの?」
「あ、コミュニケーション能力をつけたいです」
「はいはい、コミュニケーション能力ね」
そう言うと、お兄さんは僕にシールをベタっと貼った。
「時間が来ると剥がれるから注意してね」
お兄さんは僕に言って、またにやりと笑った。
僕はその足で面接会場に向かった。
どうしても内定をもらいたいと思っている第一希望の企業の面接である。
名前を呼ばれ、面接室に入る。
すると、どうしたことか、僕はまるで別人のように上手く話をして自分をアピールすることができた。
面接会場から出る時になって、ぺりぺりと音がしてシールが剥がれた。
危なかった……。
とにかく、さっきの面接はうまくいったぞ。
これなら内定がもらえるかもしれない。
僕は上機嫌で駅まで歩いた。
と、そこで僕はカバンを忘れている事に気がついた。
急いで取りに戻る。
さっきまでいた企業のビルにたどり着いた僕は、違和感を覚えた。
あれ? なんだかおかしいな。
首を傾げながら建物の中に入り、カバンを忘れた旨を伝える。
「カバン? あぁ、一つ忘れ物があったな。はい」
カバンが手渡される。
「どうも……」
僕はお礼を言ってその場をあとにした。
おかしいな。あの人、さっきはすごく愛想が良かったのに、まるで別人みたいだったぞ。
そんな風に思いながらビルを出て振り返ると、先ほどより幾分か寂れたビルからぺりぺりと何かが剥がれ始めて……。
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