一人暮らしをしている友だちに「面白いものを手に入れたから部屋に来いよ」と呼ばれた。
友だちの部屋に行ってみると、彼はやかんを手に取りながら言った。
「これはカンカンやかんって言うんだ。不思議なやかんでな、幽霊や妖怪がやってくるとカンカンって鳴るんだ。あっ、ほら。鳴り始めたぞ」
友だちの言う通り、何もしていないのにやかんがカンカン鳴っている。
気味が悪いからやめよう、と言おうとした時、友だちの後ろに一つ目の化け物が立っているのが見えた。
「ぎゃあ!」
僕は悲鳴をあげた。
幽霊や妖怪が次々に集まってくる。
「も、もうやめようぜ!」
僕はたまらず叫んだ。
友だちが言った。
「分かった。こいつらを追い払うにはやかんでお湯を沸かすんだ。その蒸気で逃げていくらしい」
友だちはそう言った後に固まった。
友だちの顔色がみるみる青白くなっていく。
「おい、どうしたんだよ!?」
「まずい。水を用意し忘れた……」
やかんに水を汲むには、部屋から出て廊下にあるキッチンに行かなくてはならないが、僕も友だちも動けない。
と、その時、雨が振ってくる音がした。
「しめた!」
友だちは叫んで窓を開けた。
すると、そこに水がダラダラとしたたっている着物を着た女が立っていた。
雨なんて降っていなかったのである。
血と水を垂れ流す女を見て、僕は気を失った。
気がつくと、朝になっていて、幽霊や妖怪は姿を消していた。
それから僕は、彼の家には行っていない。
友だちもあの女をみて気を失い、起きた時にはあのやかんはなくなってしまったらしい。
だが不思議なことに、今も夜になると、どこからともなくカンカンという音が聞こえるそうだ。
コメント