光る相手

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 私には昔からおかしな性質がある。

 光っている異性を見つけることがあるのだ。

 時には同性が光っていることもある。

 異性や同性が光るのは、その相手が自分に好意を持ってくれている時なのである。

 ホタルも光ってコミュニケーションを取ると言うが、そんな感じなのだろうか。

 私は、そんな光っている人に近寄られるのが嫌だった。

 光っている人は、その光のせいでよく見えなくなるので苦手なのである。

 そんな時、遠くで光っている人を見つけた。

 それは同僚の伊東くんだった。

 でもなぜか、伊東くんだけは嫌な感じがしない。

 ある日、私は伊東くんに食事に誘われた。

 待ち合わせ場所について伊東くんを待っていると、かぁっとあたりが光って何も見えなくなってしまった。

 どうしよう、と慌てていると、誰かに腕を掴まれた。

 ぐいっと引き寄せられた先に、伊東くんがいた。

「伊東くん!?」

 驚いている私に、伊東くんが教えてくれた。

 伊東くんも私と同じ体質らしい。

 それで、初めて私を見た時に私のことが光って見えたそうだ。

 私たちはお互い光っているから、近づくとお互いが見えなくなってしまう。

 じゃあ、伊東くんとは一緒にいられないのかな。

 私がそう思っていると、伊東くんがさらに私の体を引き寄せて言った。

「こうして近くにいれば見えるよ」

 
 それから私と伊東くんは結婚した。

 しかし相変わらず、お互いの姿はよく見えない。

「あ、ごめん」

 私はテーブルの上に置いていた手を引っ込めた。

 伊東くんの手に触れてしまったのである。

 伊東くんが私の手を軽く握り返してくれる。

 お互いの姿が見えないので、こんなことにもまだいちいちドキドキしてしまうのだ。

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