村に住む人みんなが長寿という不思議な村がある。
その秘訣を知りたいと思い、取材を行った。
村人に質問してみると、村人は「夜になったら分かりますよ」と言った。
なんでも、この村で一泊してみると分かるらしい。
私は旅館に宿をとった。
夜、九時頃になると旅館全体の電灯が消えた。
なんでも従業員も寝るという。
ずいぶん早いなぁ、と思いながら布団に潜った。
すると部屋の壁からうっすらとした羊が歩み出てきた。
体が透けているところを見ると、どうやら羊の幽霊らしい。
私は次々にやってくる羊を見つめた。
すると、いつのまにか眠ってしまって、目覚めると朝だった。
どうやらこの村の村人が長寿なのは、あの羊の霊のおかげで早寝早起きだかららしい。
私が村の長に「この村に住みたいです」と願い出ると、長は人の良さそうな笑顔で言った。
「ぜひ、いらしてください。あ! でも……」
「何か問題がありますか」
「失礼ですが、何年生まれですか?」
「1998年生まれですけど……」
「あぁ……では、ちょっと難しいです」
「え? どうしてですか」
「寅年の人だけは、なぜかこの村に住めないのです……。羊が怖がって現れなくなるんですよ」
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