ステルス巻尺というものが発売された。
その巻尺を任意の範囲に広げると、範囲外に動けなくなるという代物で、元は犬用に発売されたものらしい。
決まった時間になると、巻尺の範囲が狭まり、巻き取られて中心にある場所に帰らないといけない。
家を中心にしてステルス巻尺を広げて門限を守らせたり、終電が近づくと駅に向かって巻き取られていったりといった使い方をされた。
ある日、目覚めると家族みんながリビングで密着していた。
ステルス巻尺が壊れたのだ!
誰も携帯を持ってない。
そこに犬のポチがやってきた。
「ポチ! 巻尺が壊れたんだ! そこにあるスマホ取って持ってきてくれないか?」
ポチはスマホをくわえた。
「いいぞ!」
思わず大声をあげると、その声にびっくりしてどこかへ走り去ってしまった。
「あー、ポチ!」
絶望していると、近所の人が見に来てくれて、なんとか助かった。
ポチのステルス巻尺の範囲を、花壇を荒らすから、と極端に狭くしていたが、広げてあげようと思う。
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